先月、塾の先生をやっていた頃の教え子から突然LINEがきました。
内容は、オススメの本でした。
本を読んだら、塾の時に楽しかったことを思い出して、なつかしくなったそうです。それでオススメしたいとのことでした。
ちょうど、本屋大賞の発表があり、この作品が2位だったので、即読む気になり、さっそく買ってみました。
内容をアマゾンより引用。
小学校用務員の大島吾郎は、勉強を教えていた児童の母親、赤坂千明に誘われ、ともに学習塾を立ち上げる。
女手ひとつで娘を育てる千明と結婚し、家族になった吾郎。ベビーブームと経済成長を背景に、
塾も順調に成長してゆくが、予期せぬ波瀾がふたりを襲い――。
大島吾郎と千明が学習塾を立ち上げ、その後、何十年に教育界、塾業界、そして大島吾郎たちが立ち上げた塾の歴史が描かれています
また、大島家の家族の様子や、その教育観が随所で見られます。
472ページにおよぶ大作ですが、読み終えるのに全然苦痛を感じさせず、かなり作品に引き込まれる内容でした。
すごくおもしろかった。
さて、この話を読んだ時、言うまでもなく、私は塾時代を思い出しました。
生徒のことを考え、がむしゃらに教えていた時期、
自分の理想の教育観などはなく、会社から言われるままに生徒指導をしていました。
ただ、教えるのは楽しくてしかたなかった
やっていくうちに、クラス内の生徒の学力差が激しくて、どうしていいかわからないこともありました。
中学3年生、受験前の冬期講習で、5教科全部の授業を担当しなければいけないこともありました。
実は、私はバリバリの文系で理数系は苦手なんです。でも会社の指示を守らなければいえません。自分でも半信半疑のまま、中3の数学を教えたりもしました。
塾生に、塾に友だちを勧誘するようにしつこく言ったこともあります。生徒数増には、友だちのオススメが一番手っ取り早いからです。勧誘マニュアルにしたがって一生懸命やりました。
嫌なことを数え上げればキリがないのですが、それでも救われたのが、教え子の存在です。
自分の生徒を支えるはずの仕事なのに、精神的には支えられてたなんておかしなはなしですよね。
でも実際そう。
先ほどのように、LINEでオススメの本を教えてくれた教え子にもかなり救われたような気がします。
塾時代は仕事の思い出が半分、生徒との思い出が半分かな。
さて、話を『みかづき』に戻すと、教育の理想を貫く大島吾郎、自分の理想は持ちながらも塾の拡大を目指す千明が物語の中心です。
後半はその子どもたちも登場して、話が少し違う方向にも展開しています。
物語全体を貫いているのは教育に関することです。
森絵都さんの努力の取材の賜物でしょうが、教育について、また塾業界について、綿密に描かれていました。
読み終わって、かなりおなかいっぱいな気分。加えて、心もいっぱい。
それほど、この作品は心に響きました。塾業界にいる人はもちろん、親御さんを含め教育にたずさわる全ての人にオススメの本です。
興味があったら手にして欲しいなあと思います。
この作品の満足度
☆☆☆☆☆(星5つ)