伊東静雄の「夏の終わり」は、空を行く雲をきれいに描いた詩だ

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夏の空。

 

ものすごい青空。

 

この世でいちばんきれいな青は、空の青なんじゃないかというくらいですね。

 

昔、唄った歌を思い出します。

知らなかったよ 

空がこんなに青いとは

 (「空がこんなに青いとは」より)

 

ところで、空について書かれた詩の中でも、特にきれいだなぁと私が思うのが、伊東静雄の「夏の終わり」。

 

夏の終わり

 

夜来の台風にひとりはぐれた白い雲が

気のとほくなるほど澄みに澄んだ

かぐはしい大気の空をながれてゆく

太陽の燃えかがやく野の景観に

それがおほきく落す静かな翳は

……さよなら……さやうなら……

……さよなら……さやうなら……

いちいちさう頷く眼差のやうに

一筋ひかる街道をよこぎり

あざやかな暗緑の水田の面を移り

ちひさく動く行人をおひ越して

しづかにしづかに村落の屋根屋根や

樹上にかげり

……さよなら……さやうなら……

……さよなら……さやうなら……

ずつとこの会釈をつづけながら

やがて優しくわが視野から遠ざかる 

 

(一部わかりやすい表現に変えてあります)

 

夏の空を想像してください。

 

台風一過の青空、雲が浮かんでいます。

 

こういう時の空ってとてもキレイなことは言うまでもありません。雲もなにやら光っている感じです。

 

その雲が風に流されていますねぇ。

 

 

さて、下に目線を移すと、地面にはその雲の影が

 

街道を横切り

 

水田の上を通り

 

道行く人を抜かしていき

 

そして、家の屋根や樹木の上を行くのです。

 

 

みんなの前を通り過ぎて行く雲を、詩人は

「雲がさよならを言っているようだ」

と捉えています。

 

「……さよなら……さやうなら……」

 

と。

 

雲目線で見てみると、空の上で風に乗って移動する雲が、

 

街道、水田、屋根、樹木を見下ろして、「さよなら」を言っているんですね。軽く会釈をしながら。

 

最後に、詩人は

「やがて優しくわが視野から遠ざかる 」

と、締めます。

 

夏の雲が去っていく様子をとてもきれいに表現しています。

 

夏の終わりの風景が、まるで目の前に登場したかのように想像できます。

 

それにしても、風に流されている雲を、こんなにも生き生きと表現した詩人は、そうはいないでしょう。

 

私はこの詩を読んだ時、雲が生きているかのような錯覚をしてしまいました。

 

詩人にかかると何の変哲のない雲にも生命が与えられるんですね。

 

伊東静雄は本当に素晴らしい詩人です。

 

 

夏の空に、雲が流れていたら、ぜひ伊東静雄の「夏の終わり」を思い出してください!